呼吸器内科とは
呼吸に関係する臓器(器官)の病気を専門的、かつ内科的にみる診療科です。
呼吸に関係する器官とは、鼻、咽頭、喉頭、気管支、気管、肺などです。
具体的には、風邪症候群、扁桃炎・咽頭炎、気管支炎、肺炎、肺気胸などの急性疾患、さらに気管支喘息、アレルギー性喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺結核、気管支拡張症などの慢性疾患まで、幅広い呼吸器疾患の診断と治療、および管理を行います。
よくある呼吸器の症状
呼吸器疾患の代表的な症状には、咳や痰がありますが、それ以外にも多様な症状が起こることがあります。症状では呼吸器に問題があるとは思えないものもありますし、呼吸器以外の疾患を疑う必要があるケースもありますので、下記のような症状があった場合には、できるだけ早めにご相談ください。
咳
咳は健康な場合でも1日数回出ることがありますが、咳が続く・特定の時間帯や状況で咳が出やすい・痰が絡む咳がある場合には呼吸器疾患が疑われます。また、食事中にむせる・咳き込むことがある場合は誤嚥(ごえん/飲食物が気管に入ること)を起こしていると考えられます。誤嚥は肺炎発症につながりやすいため、特に注意が必要です。
痰
健康な場合でも痰が出ることはありますが、疾患を疑う必要がある痰もあります。回数や量が普段よりも増えた、痰が黄色・茶色っぽい、痰に血液が混じるなどの場合には、早めに呼吸器科内科を受診してください。
呼吸困難・息切れ
呼吸が苦しい、息切れする、呼吸困難は、ほとんど同じ症状です。こうした症状は、酸素が不足したサインとして現れます。歩行や運動など酸素消費量が多い行動をした後に起こることが多いのですが、呼吸器疾患によって起こっていることもあります。また、呼吸器疾患が進行すると安静にしていても呼吸が苦しく感じられます。
喘鳴(ぜいめい)
気管や気管支が狭くなって、無理に通る空気でのどが笛のように鳴っている状態です。「ゼーゼー・ヒューヒュー」という異常な呼吸音が連続的に発生します。気管支喘息の発作や異物誤飲などによって起こります。
胸痛(きょうつう)
胸の痛みは呼吸器疾患でも生じますが、心臓や上部消化管などの疾患でも起こることがあるため、胸痛だけでは疾患を特定できません。呼吸器や心臓の疾患による胸痛は、緊急の対応が必要になることが多いため、胸痛があった場合には速やかな呼吸器科か循環器科の受診が必要です。呼吸器科で胸痛の症状がある方の診療を行う場合には、狭心症や心筋梗塞など心臓疾患ではないかを早急に確かめます。ポイントを絞った問診で心臓疾患が疑われる場合には、循環器科の医療機関をご紹介してすぐに適切な医療を受けていただけるようサポートしています。心臓疾患ではないと判断できた場合には、丁寧な問診と呼吸器科の検査を行って、気胸や胸膜炎・膿胸など緊急性の高い呼吸器科の疾患ではないかを確認します。
発熱
発熱は幅広い疾患で現れる症状ですから、他の症状がないかを確認することが重要です。咳や痰、呼吸困難などがある場合には呼吸器疾患が強く疑われます。
チアノーゼ
皮膚や粘膜が広範囲に青ざめている状態で、血液中の酸素濃度が低下して起こります。唇や指先が青紫になって気付くケースが多くなっています。主に、心疾患(循環器疾患)か呼吸器疾患で起こります。チアノーゼが認められる場合には、心臓と呼吸器のどちらに問題があるのかを早急に見極める必要があります。
嗄声(させい)
声がれ・しわがれ声・かすれ声のことで、声の使い過ぎなどによる声帯の異常や反回神経麻痺によって起こります。声帯に異常がある場合には耳鼻咽喉科の受診が必要です。反回神経は声帯を動かす筋肉のコントロールをしているため、反回神経が麻痺すると嗄声になります。反回神経麻痺は呼吸器疾患によって起こることがあり、肺がんやリンパ節転移といった深刻な疾患で起こっている可能性もあります。嗄声に誤嚥をともなう場合には特に注意が必要です。声がれがあって、食事の際にむせやすくなった場合にはできるだけ早く呼吸器科を受診してください。
代表的な対象疾患
- 風邪症候群
- インフルエンザ
- 咽頭炎・扁桃炎
- 気管支炎
- 気管支拡張症
- 肺炎
- 気管支喘息
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 肺結核
- 肺気胸
- アレルギー性鼻炎(花粉症) など
呼吸器内科で扱う代表的な疾患
風邪症候群
風邪症候群(急性上気道炎)は、いろいろな病原体が鼻から喉、気管の入り口にかけての空気の通り道(上気道)に感染し、それらの部分に炎症を起こしている状態を総称して言います。
ほとんどの原因はウイルスによる感染になります。
主な症状としては、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、喉の痛み、せき、痰、頭痛、発熱などになりますが、そのほか、吐き気・嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状を伴うこともあります。
通常であれば、およそ1週間以内で症状は改善していきます。
風邪の治療としては、鎮せき薬や去痰薬など、症状を軽くする薬を組み合わせて処方します。
また、ウイルス感染に引き続いて起こりやすい細菌による二次感染を予防する目的で、抗生物質を組み合わせることもあります。
気管支炎
気管支とは、気管から肺に向けて左右に枝分かれした部分を言います。
ウイルスなどの感染により、この気管支の粘膜に炎症が起きると気管支炎となります。
主な症状ですが、せきや痰のほかに、全身の症状として、発熱、食欲不振、全身倦怠感といったこともみられる場合があります。
大抵は、風邪による上気道の炎症が気管支へと波及することによって発症します。
治療としては鎮せき薬や去痰薬、消炎鎮痛薬、解熱剤などによる対症療法が中心になります。
インフルエンザの場合には抗ウイルス薬、細菌感染の場合は抗生剤が用いられることもあります。
肺炎
肺の中に細菌やウイルスなどの病気を起こす微生物(病原微生物)が入り、感染することで肺が炎症を起こしている状態が肺炎です。
通常であれば、人間の体に備わっている様々な防御機能が働いて病原微生物を排除するのですが、何らかの原因で体力や抵抗力が落ちていたり、病原微生物の感染力の方が上回っていたりすると肺炎になります。
なかでも、高齢者や慢性の病気を持っている方などが罹りやすく、しかも治りにくいという傾向があります。
症状に関しては、高熱(38度以上)、激しいせきや痰、呼吸困難になるほどの息苦しさ、胸痛などです。この状態が1週間以上続くようでしたら肺炎の疑いがあります。
肺炎は、その元となる病原微生物を死滅させることが大事ですので、それらに対抗する抗菌薬(経口抗菌薬)による治療を主に行います。
そのほかにも、せきを鎮める鎮せき薬、解熱薬、去痰薬、気道を拡げる気管支拡張薬などが、症状に応じて用いられます。
インフルエンザ
風邪症候群のひとつで、インフルエンザウイルスに感染することで発症します。
一般の風邪と比べると症状は重いのですが、症状が3~7日間続いた後、治癒に向かいます。
ただし、気管支炎や肺炎を併発しやすく、脳炎や心不全に至るケースもあり、注意が必要です。
主な症状ですが、高熱、悪寒、頭痛、関節痛、倦怠感などの全身症状のほか、せき、痰、呼吸困難、腹痛、下痢などがみられます。
インフルエンザの症状が疑われる際は、検査キットを用いて診断しますが、その結果は15分ほどで出ます。
治療については安静に努めながらの対症療法になります。
熱や痛みについては解熱薬、せきや喉の痛みには鎮せき去痰薬や気管支拡張薬などを用います。
また、感染初期であれば抗ウイルス薬による治療を行うこともあります。
咽頭炎
鼻や口の奥を咽頭と言いますが、この部分に炎症が生じた状態が咽頭炎です。
風邪、インフルエンザなどによるウイルス・細菌感染をはじめ、刺激ガスや粉塵の吸入、喫煙、声の酷使などによる粘膜の炎症が原因となります。
喉の痛みや痒み、声がれ、せき、痰などの症状がみられ、重症化すると急性喉頭蓋炎などを併発して、呼吸困難の怖れが生じる場合もあります。
治療に関しては、風邪と同様の全身的な治療や対症療法、吸入治療などを行います。
なお、重症化により気道狭窄がみられる場合は、抗生剤による点滴投与も行います。
扁桃炎
主に口蓋扁桃にウイルスや細菌が感染し、急性の炎症が起こった状態が扁桃炎です。
頭痛をはじめ、高熱や寒気、全身の倦怠感や関節痛といった風邪のような症状がみられるほか、激しい咽頭の痛みがあります。
また、喉の奥を見ると、両脇が赤く腫れているのが観察されます。
治療につきましては、ウイルス性による扁桃炎の場合、風邪の時と同様の治療になります。
解熱剤を服用するほか、うがいをし、安静に努めることで、1週間ほどで治ります。
また、細菌性の扁桃炎の場合は、抗生剤の投与による治療が中心になります。
このほか症状を和らげるために解熱剤や消炎鎮痛薬、うがい薬などが用いられます。