血圧について
血圧は、心臓から送り出された血液が血管にかける圧力のことです。心臓は血液を送り出すポンプのような役割を担っていて、心臓が収縮すると血液が勢いよく送り出されるため血圧が高くなり、心臓が拡張すると血圧は低くなります。血圧計で計測すると2種類の数値が表示されますが、数字が多い方が収縮期血圧で、少ない方が拡張期血圧です。
なお、血圧は運動やストレス、食事などさまざまな要因で大きく上下します。クリニックや病院で血圧を測ると緊張感から高めの血圧が出やすく、ご自宅で測った際にはリラックスしているため低めに出ます。診療の際には、こうした診察室血圧・家庭血圧を分けて考えます。改訂された最新の高血圧治療ガイドライン2019では、家庭血圧の重要性が指摘されていて、診断では診療室血圧ではなく家庭血圧を優先するとしています。
なお、特殊な装置を使って24時間の血圧の変化を記録する検査なども必要に応じて行います。
高血圧とは
血圧を測った時の収縮期が140mmHg以上、拡張期が90mmHg以上のどちらかを超えたら高血圧です。ただし、1度血圧を測って高い数値が出たらすぐに高血圧と診断されるというわけではありません。安静時に高い血圧が続いている状態が高血圧です。
高い血圧が続いていると血管に絶えず負担をかけるため、高血圧は動脈硬化の発症や進行に大きく関わっています。動脈硬化が進行すると血管は硬くなるだけでなく、もろくなってしまいます。それによってある日突然、心筋梗塞や脳梗塞などを起こすリスクが高くなってしまうのです。
高血圧も動脈硬化も自覚症状に乏しく気付かない間に進行してしまいますし、自然治癒することはないため、適切な治療を続けてコントロールすることが大切です。
目標血圧
高血圧治療で目標とする血圧の値は、年齢や他の疾患の有無などによって異なります。
75歳未満は、130/80mgHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)
75歳以上は、140/90mmHg未満(家庭血圧では135/85mmHg未満)
糖尿病や脳血管障害がある場合は、130/80mmHg未満
慢性腎臓疾患(尿蛋白陰性)がある場合は、140/90mmHg未満など
高血圧の原因
ほとんどの高血圧は、遺伝的素因に生活習慣やストレスなどが組み合わさって発症しているため、生活習慣の改善によって発症や進行の予防が可能です。
発症頻度は高くありませんが、他の疾患や治療薬などの影響で高血圧になることもあります。その場合には原因疾患の治療や別の治療薬に変更することで血圧も正常に戻る可能性があります。
生活習慣によって高血圧を発症している場合、同じ条件で発症しやすい糖尿病・脂質異常症などを発症するリスクも高くなります。肥満で、さらに高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が複数ある場合、それぞれの検査数値がそれほど悪くなくても動脈硬化が進行しやすいことがわかっています。生活習慣病や動脈硬化は自覚症状に乏しいため、健康診断の結果をしっかり確認して基準値を超えそうになったらご相談ください。
高血圧の治療
減塩・禁煙・節酒や禁酒・肥満解消・運動習慣などの生活習慣の改善を行います。高血圧治療では、血圧を正常値に保つことが重要ですし、無理をしても続かなければ意味がありません。患者様のライフスタイルや好みなどに合わせて、できる範囲のことからはじめることを当院では重視しています。早めに治療を受けると楽なコントロールで改善可能ですから、数値がそれほど悪くない段階での受診をおすすめしています。
こうした生活習慣の改善で思うような効果を得られない場合は、薬物療法を行います。
生活習慣の改善
減塩
日本人は塩分摂取量が多いため、減塩によって血圧の数値が改善しやすいとされています。
1日の塩分摂取量は6g未満が適切とされていますが、野菜や肉・魚といった素材自体に3g程度の塩分が含まれています。そのため、調味料として使えるのは1日4g程度までです。なお、ハムやソーセージなどの加工肉、干物、漬物、チーズ、箸休めの佃煮といった加工食品にはかなり大量の塩分が含まれているため、こうした食品をとるのは控えましょう。
薄味は最初、物足りなく感じますが、次第に素材の味を強く感じるようになって気にならなくなります。また、うまみ成分を増やすことで塩味が薄くても満足感を得やすいため、出汁、干しシイタケ、トマトなどうまみ成分の濃いものを多めに使うようおすすめしています。また、香りが強いものも薄味をおいしく食べるポイントになります。ゆず・青じそ・ミョウガ・ショウガなどの薬味、ハーブ、スパイス、香味野菜などを料理に取り入れてください。
肥満の解消と体重コントロール
大規模な統計調査によって病気になりにくい標準体重がわかっています。肥満している場合には標準体重を目標に減量をして、標準体重になったらそれをキープするようコントロールします。
体格は、肥満・標準・低体重(痩せ)の3種類に分けられます。ご自分の体格指数(BMI)は、体重と身長の数値から導き出せます。
体格指数(BMI)=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}
- 標準体重 BMI22
- 肥満症 BMI25以上
- 低体重 BMI18.5以下
肥満は生活習慣病や動脈硬化をはじめとした多くの疾患の発症や進行のリスクを上昇させます。標準体重にすることで、多くの病気の予防や進行防止につながります。ただし、急激に減量するとリバウンドしやすい傾向がありますし、低体重になると別の病気リスクが上昇してしまいます。無理せずゆっくり体重を落として、標準体重になったらしっかりキープするようにしましょう。
節酒
適量は、1日に日本酒1合、あるいはビール500mlまでです。飲まない日があっても持ち越しはできません。
運動
少しだけ速足の散歩など、軽く汗をかく程度の有酸素運動が有効です。激しい運動は必要ありませんが、最低でも週に3回程度行ってください。また、筋肉などを痛めないよう、運動の前後には軽くストレッチをしましょう。適切な運動量や内容には個人差がありますし、膝関節や骨の状態、呼吸器疾患の有無によっては自己判断で運動することが逆効果になってしまう可能性もあります。医師に相談して適切な運動についてのアドバイスを受けてから行うようにしてください。
禁煙
喫煙すると血管が収縮して血圧が上昇します。血管への負担を増やすため生活習慣病や動脈硬化がある場合には必ず禁煙してください。また、喫煙は肺がんをはじめとした呼吸器疾患にとっても大きなリスク要因です。ご自分では禁煙が難しいという場合には、禁煙外来の受診をおすすめしています。治療薬などで効果的にサポートしていますので、お気軽にご相談ください。
薬物療法
血圧を下げる薬剤には、異なる作用を持ったものが何種類もありますので、患者様の状態にきめ細かく合わせた処方が可能です。処方する薬剤の特徴や服用の際の注意点、他の薬剤との違い、起こる可能性のある副作用などについてもくわしくご説明しています。また、薬を服用していて気になることがありましたら、遠慮なく医師にお伝えください
利尿剤
尿量を増加することで血液量を減らし、血圧を下げます。
血管拡張薬
血管を拡張させて血圧を下げます。
神経遮断薬
血管の緊張につながる心臓や血管への過剰な刺激を抑制し、血圧を下げます。
レニン・アンギオテンシン系薬
ホルモンの働きに作用して循環血液量を調整し、血圧を下げます。