慢性呼吸不全

慢性呼吸不全とは

肺は呼吸によって入ってきた大気中の酸素を体に取り入れ、体内でできた炭酸ガスを外に放出する働きを担っています。この働きを十分に果たせなくなった状態が呼吸不全です。酸素を全身に届ける動脈の血液は、通常であれば100mmHg程度の酸素が含まれていて、そのほとんどの酸素は赤血球の中のヘモグロビンと結合して運ばれます。血液中の酸素が減少した状態は低酸素血症、炭酸ガスを十分に放出できず動脈の二酸化炭素が過剰になると高二酸化炭素血症と呼ばれます。
呼吸不全は、動脈血中の酸素分圧が60mmHg以下になることです。呼吸不全が1ヶ月以上続いた場合は、慢性呼吸不全と診断されます。

慢性呼吸不全を起こす疾患

慢性呼吸不全を起こす主な呼吸器疾患には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核後遺症、間質性肺炎、肺がんなどがあります。また呼吸器疾患以外にも、筋萎縮性側索硬化症や筋ジストロフィーといった神経や筋肉の病気によって生じることもあります。

慢性呼吸不全の主な症状

息切れや呼吸しにくさ、呼吸が苦しいなどの呼吸困難の症状が現れます。最初は、坂道や階段を上る際に息切れを起こします。これを労作時呼吸困難と呼んでいます。原因疾患によっては呼吸困難以外の症状を起こすこともあります。高二酸化炭素血症では、頭痛や血圧上昇などの症状を起こします。慢性呼吸不全がゆっくり進行するとこうした症状が自覚しにくいこともあるため注意が必要です。こうした状態が続くと全身の酸素が慢性的に不足するため、さまざまな臓器などが正常な機能を行えなくなってしまいます。

慢性呼吸不全の治療

原因疾患の治療だけでなく、不足する酸素を補う酸素療法、二酸化炭素が増えた場合の換気補助療法、そして呼吸リハビリテーションなどを必要に応じて行います。現在は酸素療法や換気補助療法が在宅で受けられるようになっています。

在宅酸素療法

在宅酸素療法大気中の酸素濃度は約20%です。慢性呼吸不全の場合、そのままでは血液中の酸素濃度を十分に保つことができないため、濃度の濃い酸素を吸入することで血中酸素分圧を保てるようにする療法です。以前は入院しないと受けられなかったのですが、現在はご自宅で酸素療法を行うことができます。基準を満たせば、在宅酸素療法を健康保険適用で受けられます。
酸素供給機(酸素濃縮器や液体酸素タンク)からカニューラという細いチューブを通して酸素を送り出し、鼻から吸入します。
酸素濃縮器は、空気中の酸素と窒素を分離して、酸素だけを供給します。液体酸素を使わなくていいため、手軽に使用できます。外出時には液体酸素ボンベを使うタイプと、携帯型酸素濃縮器を使うタイプがあります。充電することで数時間の外出が可能です。
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換気補助療法

血液中の二酸化炭素が増えている場合には酸素吸入では不十分ですから、呼吸自体の補助が必要になります。以前は気管に管を入れて人工呼吸を行っていましたが、現在は鼻や顔に密着する特殊なマスクを用いる療法が登場しています、これにより、気管に穴をあけないまま、在宅で換気補助療法を行うことが可能になっています。声を出すこともできますし、非侵襲的陽圧換気を行うため、長期間の管理も比較的楽にできるようになっています。

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