健康診断を受診して胸部の異常を指摘されたら
健康診断の胸部X線検査は、病気の早期発見や早期治療につなげることを目的に行われています。そのため、少しでも疑わしい所見があれば異常を指摘します。その異常が実際に治療を必要とするかどうかを確かめるためには、専門医による精密検査が必要です。健康診断で異常が指摘されたことをきっかけに受けた精密検査で発見されたがんは、自覚症状がまだない早期がほとんどを占めるため適切な治療で治癒する可能性が高い場合が多いのです。そのため、健康診断で異常を指摘されたら、できるだけ早く専門医の受診が必要です。
胸部X線検査をきっかけに受けた精密検査で発見される病気
胸部X線検査で異常が指摘されて精密検査を受けた場合、肺や甲状腺の病気が発見されることも多く、その中には肺や甲状腺のがんやがんの疑いがあるとわかるケースもあります。肺がんは日本人のがんによる死因として第1位を占めている病気です。転移や進行によって治療が難しくなりますが、早期に発見して適切な治療を行うことで治癒も期待できます。
肺がん・肺腫瘤
胸部X線検査で結節陰影や浸潤陰影が認められる場合、肺がんや肺腫瘤が疑われます。
結節陰影は、良性腫瘍・肺結核・肺真菌症・非結核性抗酸菌症などでも認められることがあります。良性・悪性の見極めには変化がポイントになるため、「新出現」「増大」と指摘された場合にはできるだけ早く精密検査を受ける必要があります。
湿潤陰影は、鮮明ではない影が認められるもので、肺の組織に水がたまっています。肺炎で生じやすい所見ですが、肺がん発見のきっかけになることもあります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)・慢性気管支炎・肺気腫
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は長年の喫煙によって肺の組織が壊れてしまう病気です。破壊された肺の組織や気管支が細くなっているなどの所見が確認できます。壊れてしまった組織の再生はできませんが、禁煙によって進行を止められます。進行すると通常の呼吸では十分な酸素を得ることができず、酸素を常に補給する治療が必要になります。
結核
結核には、感染を広める危険性がある活動性肺結核と、結核菌を排出しないため感染させる危険性がない陳旧性肺結核に分けられます。それぞれ特徴的な影を胸部X線検査で確認できます。結核には昔の病気というイメージがありますが、現在も毎年1万人以上の方が肺結核の診断を受けています。適切な治療を半年ほど続けることで完治が望める病気ですから、感染を広げないためにも早めの受診が重要です。
非結核性抗酸菌症
主な症状は咳・血痰・発熱・倦怠感など結核によく似ていますが、ヒトからヒトへの感染を起こさないという大きな違いがあります。胸部X線検査やCTでは結核との鑑別が難しいため、痰や組織を採取して顕微鏡で菌の種類を確かめて確定診断します。
サルコイドーシス
肉芽腫という炎症ができる病気で、発症原因はわかっていません。全身のさまざまな場所に肉芽腫ができて、どこにできたかによって現れる症状は異なります。肺に肉芽腫ができると、咳や呼吸困難を起こすこともありますが無症状の場合も多く、健康診断などの胸部X線検査で肺門部のリンパ節腫大が認められて発見されることもあります。多くは自然によくなるとされていて、深刻な状態になることは少ないとされています
甲状腺がん
胸部X線検査で、気管が左右どちらかにずれている場合、甲状腺の肥大や周辺の腫瘍が疑われます。超音波(エコー)検査や血液検査などで甲状腺に異常がないかを確認する必要があります。
胸部X線検査ではほとんどの病気の診断はできませんし、異常所見があっても精密検査を行うと異常がないケースもかなりあります。ただし、早期治療により治癒の可能性が高まる疾患の早期発見につながることがありますし、適切な治療により将来の健康を長く守ることにつながることもあります。治療が必要なのかを確かめるためにも、健康診断で要精密検査を指摘されたら、気軽にいらしてください。
精密検査
健康診断で要精密検査を指摘された場合、呼吸器科を受診して、胸部X線検査、胸部CT検査、肺機能検査などから必要な検査を行います。
呼吸器科で再度の胸部X線検査を行うのは、画像の変化を比較して観察することで早急な治療が必要かどうかを確かめることができるからです。胸部CT検査は、病変の位置、形状、輪郭線の状態などを詳細に確かめることができます。肺機能検査はいわゆる肺年齢を確かめることができる検査で、肺機能低下の有無や程度を知ることができます。
こうした精密検査は、健康保険が適用されます。職場などで受けた健康診断だけでなく、当院以外の医療機関で健康診断を受けた場合も当院で精密検査を受けることができます。なお、受診の際には、必ず健康診断の結果をご持参ください。